賃貸借契約について
「賃貸不動産経営管理士試験に役立つ!賃貸借契約について学ぼう!」ということで、大家さんにも、入居者さんにも、初めて賃貸に住もうと思っている方にも、そして、賃貸不動産経営管理士試験を受けようと思っている方にも役立つような、賃貸借契約について連載していきます。特に賃貸不動産経営管理士試験の受験者の方にとって隙間時間にスマホで見直せるようまとめています。是非ご参考にしていただければ幸いです。。
今回第1回目として、まず基本となる、賃貸借契約とはどのような契約か。
そして、賃貸借契約締結前での過失などはどのように処理されるのでしょうか。
また、賃貸借契約にはどのような種類があるのでしょうか、使用貸借契約は賃貸借契約と似ていますが何が違うのでしょうか。
といったことについて説明していきます。
賃貸借契約とは
賃貸借契約は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約束し、相手方がこれに対して対価関係である賃料を支払うことによって効力が生じる有償の双務契約です。
※有償契約:契約の当事者双方が互いに対価的な経済的損失をするような契約
※双務契約:契約の当事者が互いに対価的な債務を負担する契約
そして、賃貸借契約は諾成契約であり、書面により合意しなくても契約が成立します。しかし、契約を巡るトラブル回避のために契約書を作成しています。宅地建物取引業者が建物賃貸借契約を媒介する場合は、宅地建物取引業者は契約当事者に対して書面を交付することが義務付けられています(宅地建物取引業法第37条第2項)。
※諾成契約:当事者の申し込みと承諾という意思表示の合致で有効に成立する契約
※簡単に言えば、大家さんと借主さんで部屋を貸すから賃料払ってねという約束をすることです。この約束だけで民法上では契約は成立していますが、宅建業法上ではちゃんと書面で契約しないとダメですよとされています。
※民法第601条(賃貸借)
賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた者を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。
契約締結上の過失
契約は両当事者の合意がなければ成立しないため、交渉過程で契約締結交渉をいつでも打ち切って契約の締結を拒むことができます。契約が成立しないうちは、契約に基づく権利義務は生じません。そして、契約締結のために費用を費やしたとしても、それは自ら負担すべきてあって相手方に請求することはできません。
しかし、契約に向けた交渉が進むにつれて、交渉の相手方に対して契約が成立するであろうという強い信頼が生まれるので、その信頼は保護することが必要となります。
そこで、契約成立に対する信頼を裏切って交渉を破棄した当事者は、信義則上、契約成立を信じて支出した費用を損害として賠償しなければならないとされています。これが、契約締結上の過失というものです。
契約締結上の過失は、契約していない段階での話なので、債務不履行責任ではありません。契約前段階なので、不法行為責任等となります。
※簡単に言えば、契約するまでキャンセルできますよということ。だたし、契約交渉の段階で確実に契約するという状況の中でキャンセルされたら、例えば大家さんはそれまで契約に向けて準備して支出した分を払えということができるということです。
多くの判例によっても認められています。
・「契約の一方当事者が契約の締結に先立ち、信義則上の説明義務に違反して、契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を相手方に提供しなかった場合には、上記一方当事者は、相手方が当該契約を締結したことにより被った損害につき、不法行為による賠償責任を負うことがある」とした(最判平23.4.22)
・契約締結に向けて交渉が進んでいる段階で(借主は開店のために什器備品と買取り、貸主の承諾を得て改装等の準備を行っていた)貸主が一方的に契約締結を拒否した場合には、信義則上借主に対し損害賠償責任(什器備品の買取代金などの開業準備費用など)を負うとした事例(神戸地裁尼崎支部判平10.6.22)
・契約締結交渉が進んでいたにもかかわらず、貸主が再三契約締結日を延期した場合(借主は退職して開店準備をしていた、貸主は貸主都合で引渡しができないにもかかわらず借主にその理由を説明しなかった)、貸主は賃借予定者に対し信義則上損害賠償責任(借主の休業補償や開業準備費用など)を負うした事例(東京地判平6.6.28)
賃貸借契約の種類
建物賃貸借契約は、
普通建物賃貸借契約:契約を更新することのできる契約
定期建物賃貸借契約:契約を更新することができない契約
の2つに大別できます。
※定期建物賃貸借契約は実務でもよく使います。
そこで、定期建物賃貸借契約については詳しく「定期建物賃貸借契約」で。
そして、普通建物賃貸借契約の中には、
一時使用建物賃貸借契約:借地借家法が適用されない契約で、契約書作成においては、一時使用のための賃貸借が明らかにするために使用目的を具体的に記載する必要があります。この一時使用建物賃貸借契約は、一時使用のための賃貸借が明らかであることが大前提で、書面によらなければならないわけではありません。
終身建物賃貸借契約:借地借家法の適用が制限される契約で、「高齢者の居住の安定確保に関する法律」に基づき、高齢者単身・夫婦世帯等が終身にわたり安心して賃貸住宅に居住することができる仕組みとして、借家人が生きている限り存続し、死亡時に終了する相続のない一代限りの借家契約です。契約は、書面によって行わなければなりません。
賃貸借契約と使用貸借契約の異同
建物を利用するための権利の主要なものは、賃貸借契約ですが、使用貸借契約を締結することにより建物を利用することもできます。
使用貸借契約とは、「使用貸借は、当事者の一方が無償で使用及び収益をした後に返還をすることを約して相手方からある物を受け取ることによって、その効力を生ずる」契約です(民法第593条)。
使用貸借契約と賃貸借契約の大きな違いは、使用収益させることが無償か有償かです。
使用貸借契約の場合、無償で使用収益できるために、貸主の義務は緩和され、借主を厚く保護する必要もありません。そのため、使用貸借契約には借地借家法の適用はありません。
この観点から、下記の表を見れば当然の帰結になります。
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